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コンビニから帰る途中、近所のおばさんが僕を見ていた。
絶対に話し掛けられる、雰囲気から察した僕は焦った。
なぜならばこのおばさん、とても会話好き(と言っても一方的なのだが)で、一旦捕まってしまうと、やれ粗大ゴミの日にはいつも雨が降るだの、川口さんちの奥さんは実は男ではないかだの、ホントどうでも良い話を延々と聞かされ1時間近くは拘束されてしまうのだ。
今それをやられると困る。非常に困る。だって、せっかく買ってきたおでんと豚まんが冷めてしまうではないか。それだけはどうしても避けたい。
僕は必死で考えた。なんとかこのオバサンに不快感を与えずに「仕方ないわね」と思わせるような感じで会話を回避出来ないだろうか。考えろ。考えるんだ。
「あらあら、山下さん、今お帰り?いい話あるんだけど」
「・・・。」
「山下さん?」
「すみません、風邪で喉がアレになって声が全く出ないのです。失礼します。」
「そ、そう。なら仕方ないわね。」
よし!うまくやり過ごした!これで僕はフリーダム。温かいおでんと豚まんにありつける。ミッションコンプリート!
次の日以降、僕が風邪で頭がアレになったと言う噂話が広まっていた。