「生きるために」
「なぜエロだと言われるのかわからない」
彼と一緒に飲むと必ずこの話になる。
彼が酔っている証拠だ。
「俺は生きるために出来ることをしているだけだ。なのに価値観の違いってヤツで、なぜこうも非道い言われ方をしなければならないんだ。」
別に酒癖が悪いわけではないが、酔うと饒舌になり、僕に語り出す。ただし、かれこれ10回以上は同じ話を繰り返していることを彼は知らない。
「見た目で判断される辛さ、ってヤツなのかね?」
「見た目?馬鹿言うな、俺のは生まれつきだ。なのにキャバクラではいつも「すごそう」だの「すごく好きそう」だの、人をエロの固まりみたいに言ってくる。他の奴らにはそういうヤツもいるかもしれんが、俺はいい加減うんざりしてんだよ!」
僕は何度も同じ話を繰り返す彼にうんざりしていたが、ここまで荒れている姿を見るのは初めてだったので、ついに僕のほうから切り出した。
「一体何があったのかそろそろ話してくれてもいいんじゃないかな?」
「・・・」
「・・・実はさ、この前彼女に言われたんだ。入れなくていいからずっと舌を動かし続けてくれって。」
「ひどい」
「あんたは舌使いだけは最高なの、舌だけ動かしてくれればそれでいいの、だってよ・・」
アリクイの彼はそう言うと、泣き顔を見られたくなかったのかテーブルに突っ伏した。
僕は「とことん飲もうか」と彼に言ってズブロッカを追加注文した。