「鎖」


「何をそんなに不安に思うんだい?そんなに不安ならば、心配ならば、僕のように鎖で縛り上げて部屋の中に大切に飾っておけばいいだけのことじゃないか。」


「確かにそうしたいと言う気持ちも分からないわけではない。しかし、飛び回る鳥の風切り羽を抜いて飛べなくしたところで、気持ちよく走り回るチーターの足を義足に変えたところで、彼らに何の楽しみがあると言うんだい?」


「何を言っているんだ、俺がいるじゃないか。」


「・・・絶対の自信があるんだな。」


「自信がないからやっているんだ。」


「俺はお前にだけはなりたくないな。」


しばらくの沈黙が続いた後、彼は「そうだな」と言った。これまで見たことのなかったような哀しい笑顔を浮かべて。しかし直後にいつもの自信に満ちた彼に戻り、相変わらずの自慢話をさんざん話し続け、6杯目のコーヒーを飲み干した後、僕らは帰路へと着いた。

そしてこの日の夜、「鎖と体の断片を残して逃げやがった。この出血量ならば、まだそう遠くへは逃げられないはずだ。探してみる。」という彼からの電話を最後に、彼の消息は不明である。