ベランダで煙草の煙を燻らすと、その固まりは人のカタチとなり話しかけて来た。


『お前は何を願う』


どうやらコイツは僕の願いを叶えてくれるようだ。

しかし、咄嗟に願いは何だと聞かれたところで浮かんでくるのはくだらないことばかりだ。

金が欲しい?
くだらない。

愛が欲しい?
出来合いのものは虚しいだけだ。

時間が欲しい?
無駄に持て余すだけだ。

叶う願いを増やして欲しい?
ナンセンスなへりくつだ。

などと考えを巡らせている間に、煙のソレは消えていた。



風の強い、夕暮れ時のことだった。